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板祐生 ―― 人とコレクション 稲田セツ子/「祐生出会いの館」調査研究員
祐生は、幼いころからグラフィックデザインに並々ならぬ関心を抱いていたようで、まず絵はがきに始まりマッチ、切手、煙草、おみくじ、お札などと、庶民の生活の品々に“美”を見出し、蒐集しました。日本古来の伝統の美と都市文化を視野に入れたコレクションですが、祐生ならではの“こたわり”が貼り込み帖に見られます。 「一々一面毎に貼り込み帖を作る。縦一尺一寸、横一尺三寸の大冊なり。表紙も漸次工夫す」と書いているように、ふすま紙や包装紙、さらに布切れなどが工夫をこらした台帳の表紙となり、正確に一枚一枚丁寧に貼り込んでいます。 「レッテルに価値なしときめていた自分を恥ずかしいと思う。物を美しく見たいと思う貼り込み帖は、後の人々の参考になるよう丁寧に貼りつめていきたい」(富士の屋草紙2 名物とおもちゃ 大正14年刊)と書いています。 明治、大正、昭和へと時代とともにレッテル自体も時代性を反映し、デザイン的にも優れたものが見られます。 祐生が残した約60冊にも及ぶ貼り込み帖は、紙の文化の面からも、印刷文化の面からも、また文化人類学上の研究にも非常に貴重な資料として残されたたけでなく、それ自体が一つの芸術品としてさえ見ることができます。 「蒐集とは、その時代の面影を次の世へと残していく……」といった祐生の言葉がこういう趣味の世界にも残されています。 [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] |
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