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板祐生 ―― 人とコレクション
稲田セツ子/「祐生出会いの館」調査研究員


[4] 不思議な紙の世界 「立版古」

江戸時代に、印刷物を「はんこう」と呼びました。「たてはんこう」は錦絵を切り抜き台紙に張り合わせ、芝居の舞台のように組み立てるもので、「立てはんこう」が簡略され「たてはんこ」になったといわれ、別名「切組灯籠(とうろう)」、
「宇治川合戦先陣あらそい」の原版と組み立てたもの
「組上げ灯籠」ともいわれます。
現代の“プラモデル”の源流をなすものといえば分かりやすいかもしれません。
もともと、お盆の供養に作られる灯籠が玩具になったもので、出来上がったものに舞台を作り、夏の涼み台の上などにろうそくをともして飾ったのはこれに関係しているのでしょう。

錦絵を自分で組み立てて立体とする面白さと楽しみ、立ち上がると不思議な絵の世界が現れます。当代の一流の浮世絵師の絵もあり、優れた作品も多く、夏の夜の風物詩として江戸時代から明治期にかけて大流行した玩具でした。
けれども、「立版古」は組み立ててしばらく遊んだ後は、捨ててしまわれる消耗品としての運命にありました。そして、子どもの遊びが多様化して興味が薄れたこともあり、次第にその姿を消していってしまい、現在はその作品さえ残っていないという貴重な資料となっています。

祐生は、かなりたくさんの「立版古」を頂いています。芝居の大好きな祐生にとっては欲しかったものの一つであったと思われます。
「椀久三ツ面所作事の場」の原版
▽「当狂言丸橋忠弥召捕之場」東京浅草 牧金之助版(明治27年)
▽「吉野山忠信勇戦之場」東京浅草 牧金之助版(明治32年)
▽「明治座新狂言吉例曽我石段之場」東京浅草 牧金之助版(明治33年)
▽「明治座新狂言椀久三ツ面所作事の場」東京浅草 牧金之助版(明治40年)
▽「宇治川合戦先陣あらそい」東京浅草 牧金之助版(明治43年)
▽「鬼一法眼鞍馬山術健之場」東京日本橋 綱島亀吉版(明治45年)
などがあります。

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