グラフ制作ツールの多くは、数学、物理、工学、統計など研究・調査のツールとして開発され各方面で早くから使われてきました。
それらのうち、ここでは R (R言語) を紹介します。これまでに紹介したツールと比較して、R には(1)対話的に使うツールである、(2)プログラムやデータのライブラリが豊富、(3)参考書・参考資料も多い、などの特色があります。
R は対話的なツールです。R を起動すると「>」の形のプロンプトが出てユーザーに入力を促すので、それにしたがって1行ずつ対話的に指示を出して行きます。たとえば次の2行の指示から生成されたのが 図1 の折れ線グラフです。
> x <- rnorm(10) > plot(x, type="l")
折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフなど、シンプルなグラフが R の基本で、グラフィカルな美しさという点では D3.js などに及びません。
しかし、サポートされている機能と表現の幅は広く、R のリソースライブラリである CRAN(PerlのCPANに当たるものです)には4500件を超えるプログラムが登録されています。
レッスンに使えるデータセットも豊富に用意されています。レッスン用といっても架空のデータではなく、たとえば 図2 はタイタニック号の乗客の性別・船室等級別のデータから生成されたグラフ、図3 はニュージーランドの火山 Maunga Whau の地形情報から生成されたグラフで、これらのデータは標準配布のセットに含まれていたり、CRAN からも入手できます。
R のリソースは CRAN だけでなく、研究者や機関の手で大量のものが各方面に蓄積されています。次の日本地図は群馬大学のサイトにあるデータとプログラムから作られたものです。都道府県や市町村の境界データが公開されており、これをもとに白地図や塗り分けた地図を作ることができます。R のリソースは多岐にわたり、社会、経済などから、自然言語処理、分子生物学まで、さまざまな分野の小プログラムやデータセットが入手可能です。
参考資料も質量ともに豊富です。ネット上では次の2つのチュートリアルをおさえておけば十分でしょう。入門から高度な使いこなしまでカバーしています。
R は参考書籍も早くから出ていて、最近も新刊の発行が続いています。大型書店でないと実物を目にできないのが難点ですが、オンライン書店などで検索すると多数ヒットします。