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ガリ版ネットワーク日誌[2000年8-9月]


8月某日
謄写プリント業(保険会社の統計表を作成)だった方から、未使用ヤスリ、ローラー、修正液などの寄贈があった。器材が品薄になった10数年前にまとめ買いしたという。線引きのためのヤスリ(斜A)が多いのも、お仕事柄からである。

8月某日
東京・日野市のKさんから敗戦の年に38歳で没した父(教員)の愛器を送ってくださった。教材、文集づくりに使用したもので、「ずっと捨てることができなかった」という思い出の品。堀井謄写堂 三元式4号と同1号、戦中製造のものと思われる。道具には使用者の思い出がつまっているものだ。

9月某日
紀伊国屋書店新宿南店で開催の「イッセー尾形イラスト展」(9月7日〜9月18日)で謄写版を使いたいという電話があった。ひとり芝居のイッセーさんは、イラストをかくことでも知られる。「ガリ版でやってみたい」とは本人の要望という。貸し出すことにする。「器材を貸すだけで使えますか?」 、こちらからの質問に、「事務所のものがやったことがある」というのだが。

9月7日
「イッセー尾形イラスト展」の初日、ガリ版ネットワークの北浦満治さんを誘って行ってみる。北浦さん、森田事務所の若いスタッフに楽しそうに印刷法を伝授。水を得た魚とは、このこと。

9月9日
イッセーさん、北浦名人(スタッフたちにそう呼ばれテレる)の指導で、黒い腕カバー、手ぶくろ(指先は切ってある)姿で鉄筆をにぎり、周囲の人々の似顔を次々に切っていく。なかなかの腕前。北浦さんもモデルになった。

9月18日
SVAの専務理事・有馬実成さんが亡くなった。64歳。ラオスのトーシャバン普及に関心をもち、三度も現地に出向いたのは、もとはといえば有馬さんとの出会いである。15年ほど前、SVAを立ち上げて間もない時期で、思えばタイの難民キャンプで製造したトーシャバンが活躍しはじめたころだった。
有馬さんの遺志をつぐ人材が多く育って、国内海外で活躍している姿を見るにつけ、有馬さんの20年の苦労とすばらしい仕事を見る思いがする。

(2000.12.8、志村)
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