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ガリ版ネットワーク日誌[2000年4月]

某月某日
1年半ぶりに謄写器材頒布を行った。山形県謄写印刷資料館の収蔵庫に器材を預けて以来はじめてである。
会からは北浦満治さん、同館事務局長の後藤卓也さんと私。そして、もうひとり、たのもしい“援軍”が山形駅に出迎えてくれた。ホリイ勤務時代から会の活動に力を貸してくださっていた藤田邦夫さん(今春、定年退職)が、旅行の帰路にお手伝いいただけることになったのである。総勢4名で午前10時に作業開始、40個の荷物を宅配業者の手にゆだねたのが午後6時過ぎだった。申し込んだ会員すべてに、まずは発送できてホッとした。
発送したものは、謄写印刷器(1号、2号、4号など)、原紙、ヤスリ各種、ローラー(1号、2号、4号)、スクリーン枠、鉄筆各種、ブラシ、インク、修正液、コテ、テンプレート等々。今回、在庫切れだったインク(チューブ入り、中性)とローラーのゴムを新規購入して注文にこたえた。
いつまで頒布をつづけられるのかな、と思うのだが、器材の山を見たところ、この数年は要望にこたえられそうである。ありがたいことに次々と中古器材(未使用品含む)をおくってくださる方があり、まだ“蛇の道は蛇”のたとえどおり、新品入手先も不思議とみつかるのである。
今回は、ボールペン原紙の注文が数人からあった。次回までにはそろえておきたい。ボールペン原紙とは、タイプ原紙を手書き用として開発したもの。「ボールペン原紙」はアジア原紙の商標で、堀井のボールペン原紙は「ホワイトミリア原紙」という。
絵画ヤスリ、アートヤスリは貴重品になりつつある。どこかに眠ってはいないだろうか。無地原紙も注文に追いつかない。会員から「製造しては?」という提案をいただいた。90年代はじめに四国謄写堂(現・四国わがみ)で製造されたことがあったが、最低ロットは2万枚と聞いている。取りくんでみますか?

某月某日
「すんまへん。原紙1枚ゆずってもらえませんやろか」
年配の男性から電話。その使用目的は、ミニコミや版画制作でないな。私にはピーンとくるものがあった。
「ご商売に必要なんでしょ」
と私。
「すんまへん。ガリ版ネットワークのご趣旨とはちがって、いやらしいことに使いますねん」
“モノ”のもつ機能は使用者にとって様々であって、なんの不思議もない。100円プラス速達郵便料でゆずることにした。この手の人の共通点は、やたらと急いでいることである。大きな利につながる仕事なのかも知れない。ポストに投函。事務局の私は、なぜか断れず、こんなこともしている。

某月某日
岐阜県の大東加工(タイプ原紙メーカーとして創業。現社長・神山公一氏)が、社屋内に資料室開設にむけて準備中である。
岐阜県(美濃)は、昭和初期から戦後の昭和70年代まで謄写原紙の産地として、特に戦後のいわゆるガリ版黄金期には全国生産量の70〜80%を占有した。同社では史資料収集につとめてきたが、ロウびき機械などは特に貴重。目にしたことのある人は少ないと思う。
既設の謄写印刷資料館としては、堀井謄写堂の創業者、堀井新治郎のふるさと滋賀県蒲生町岡本の旧宅敷地内に「ガリ版伝承館」(蒲生町教育委所管)がある。それに謄写印刷業としてスタートした中央印刷(山形県銅町)の「山形謄写印刷資料館」があるが、原紙メーカーによる資料室ははじめて。開設時期は未定。

(2000.6.12、志村)

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