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ガリ版ネットワーク日誌[2000年1〜2月] 某月某日 「入会したい」 「器材をゆずりたい」 「印刷がうまくいかない。どこがいけないのでしょう」 などの問い合わせが毎日のようにある。 きょうも出がけに電話機が鳴った。いきなり 「ガリやってる?」 と聞く。 「えっ、まあ」 と答え、ガリ版ネットワークという会の活動など少々説明する。 「もう年なのでガリ版やれなくなった。いろいろなものゆずりたい」 器材の他、技術書、会の機関誌などもあるらしい。名乗らないので、こちらから尋ねると北海道・登別のYさんとわかる。 2年前の 「北海道新聞」 の切抜をもって電話しているらしい。ガリ版ネットワーク主催の 「ガリ版展98」 を前に 「道新」 記者が見開きで謄写版の歴史をふくめた紹介をしてくれたものである。 電話のYさん、 「器材をゆずりたい。有効利用できたら…」 と何回も言うのだが、どうも歯切れが悪い。当方は、宅配便は着払いで、機関誌類は資料として有料(安いネットワーク価格だが)にと申し出るのだが、 「考えて送る」 と次第にトーンダウン。Yさんも愛着があって、なかなか手ばなせないおひとりなのだな、と思う。 少しだけ期待してお待ちすることにする。 某月某日 田上正子さんのミニコミ「あめつうしん」の最新号(181号 2月29日発行 謄写印刷)が送られてきた。昨年は、個人的事情によって休刊、いよいよ再刊されたわけ。問い合わせは、田上(たのうえ)さんまで。「あめつうしん」はB5判16ページ。年10回発行、送料とも年間3,000円。電話03-3229-7580 FAX03-3229-7579 某月某日 2月には8人の入会者があった。半数が30〜40代の版画家やイラストレーターで、表現方法のひとつとしてガリ版に注目、器材もこれから揃えたいという要望がある。手書きコピーだった 「工房通信」 作成をガリ版でという人もいる。昨年暮から熱心に問い合わせFAXのあったKさんは重度障害者で、口でアートをつづけてきてガリ版にも挑戦することになった。ガリ版全盛期を知らない年齢層のアクセス、きわめて興味深い。 昨今、ガリ版のイメージは、手作りのあたたかさ、のようだ。 私が、ガリ版文化史の聞き取りをはじめたころ、 「謄写版一台あれば印刷所。ガリ版は運動の組織者だ、武器だ」 と、自分史と共に語る人によく出会った。あれから20年。 “複雑で、見えにくい” 時代になったと思う。 某月某日 銀座・伊東屋ギャラリーで 「孔版画に生きた板祐生の世界」 展(2月16日〜27日)が、事故もなく終了してほっと一息。未知の方からのお祝い電報のお礼状を書いたところである。 「鳥取は大雪です。わが郷土の誇り、祐生の作品を東京の空の下で多くの人々に開陳の労を取っていただき…云々」 Sさんからのものである。こんなにも喜んでくださる方があったのか、と春の日ざしのような温かいものをいただいた思い。また、郷土の誇りをもてるSさんがうらやましくもあった。 (2000.3.9、志村)
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