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ガリ版ネットワーク日誌[1999年12月続き] 12月某日 全国各地にテンポを持つ有名DIY店から「謄写版器材の品揃えをしたいが、そちらにはありますか」との問い合わせ。器材を求める客があるという。協力はやぶさかでないが、当方は営利事業ではないことなど基本的なことを説明する。 現在、都内には文房堂池袋店などに謄写器材コーナーがあるが、ほとんどの器材の製造はとだえているので、品揃えの充実はむずかしいのが実情である。新需要にあわせて、デザイン等も現代にマッチした新謄写版、 周辺器材の工夫、製造を考えるのもおもしろいのではないか、と思っている。 12月某日 「1999.12.25 祝クリスマス 羊飼いたち「さあ行こう。主が知らせてくださったその出来事を見ようではないか」と話し合った(ルカ2:15)」。 ことしも新約聖書の一節を加えたガリ版多色刷(5色?)のクリスマスカードが届いた。クリスチャンのSさんからで、36年間つづいている。 ていねいな手紙も添えられていた。以前、謄写版用インキの入手について相談を受けたことがあって、謄写インキは久しく生産されていないので、現在入手可能なインキを紹介した。手紙には、活版インキ、版画用、プリントゴッコ用のインキを試みて、かたさ、混色について、ヤスリ面との関係などについて、具体的につづられていた。 “謄写版には油性の謄写版用インキ”とこだわるのは年配者に多いようだが、先人たちは、かなり自由に、インキ、溶剤を使用していたのを、聞き取りや文献から知ることができる。草間京平は大正12年にテレピン油を好んで溶剤に用いていたし、石版インキ、油絵具、輪転機用の中性インキ、また平版インキは、ごく普通に使用されている。手仕事は、それぞれの仕事にあわせて工夫すればいいのだろう。 12月某日 鯖江市資料館(福井県鯖江市長泉寺町)で開催の孔版画家助田茂蔵さんの展覧会「花と句と壷と --- さばえ草木譜」を見た。「花」を描くのは茂蔵さん、「句」は若いころから作句をしてきた妻の小芳さん、「作陶」は登窯で陶器をつくる二男篤郎さんと親子合作の展覧会で、版画家靉嘔(あい・おう シルクスクリーン)作品の刷り師として知られる長男憲亮さんを加え、それぞれ異なった分野で創作活動を行う芸術一家である。 助田さんの作品やプロフィールは、近いうちにWeb謄写印刷館の別ページを借りて紹介したい。
助田さん訪問の帰路、JR大津駅で下車、「謄写版と印刷物 度量衡の資料展示室」を4年ぶりに訪れた。戦前(1935年)から同地で、謄写版、タイプライタ、度量衡器、事務用品などの販売店昭栄堂を営んできた久田四良さんが、創業60周年を記念して社内の一室に1995年に開いたものである。 展示品は、自社の扱い品に加え、謄写印刷の歴史を物語る諸資料。堀井謄写堂のナショナルブランドだけでなく、昭栄堂のラベルをつけた地元製品が興味深い。 ナラやカシ材、枠にクロームメッキを使用した謄写版3号機(半紙サイズ)は堅牢なつくりで、伴野(静岡)製造で昭和12年ころのもの。京都・伏見にあった高橋製のヤスリは他所では見たことがない。この謄写版とヤスリは、昭栄堂が帝国在郷軍人会に寄贈、のちに大津青年学校のもの(焼印あり)となり、再び昭栄堂に譲渡されたという歴史を刻んでいる。展示物とともに、88歳の久田さんの話が趣がある。地味な展示だが、こうした個人資料館の存在を大切にしたい。(〒520-0043 滋賀県大津市中央3丁目1-38 JR大津駅前通り(中央大通り)琵琶湖方面へ直進、右側 徒歩5分) (99.12.22、志村)
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