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黒船工房と佐藤勝英さん 文/志村章子 某月某日、熊本の阿蘇山麓で孔版画で浮世絵を復刻する佐藤勝英さんから大作が届いた。太陽に松上の勇壮なクマタカを配した図柄。北斎「鷹に日の出」の多色刷である。 美濃判原紙をたてに2枚つないだ大きなもの(仕上がりはB4 2枚のサイズ)で、すぐ草間京平の「雪中美人」(昭和26年制作)を連装した。この年の8月に東京の専修大学を会場に開かれたZ派孔版技術講習会に参加した助田茂蔵さん(当時・36歳)たち講習生は、「雪中美人」制作中の草間の工房を訪問したという。「なんと2枚つなげた大量の原紙が便所の天井から下がっていましたよ」と思い出を語っている。 「鷹に日の出」は、佐藤さんがメーンの仕事としてきた浮世絵郵趣会発足20周年記念作品(150部限定)。もともと浮世絵郵趣会は、孔版多色刷の浮世絵復刻画頒布を目的とする会で、制作者は赤羽藤一郎。佐藤の師だった人である。 佐藤と謄写版の出会いは、劇的である。24歳の佐藤は、偶然にテレビ画面で謄写版で浮世絵制作を行う赤羽藤一郎と出会った縁で師事したが、1年半後に赤羽は病をえて急逝、佐藤はふるさとの熊本に戻り、制作に励んできた。
「黒船工房」とは、赤羽の師である天才的な孔版技術者、草間らが大正12年(1923)に旗上げした黒船社(謄写技術研究のルーツ)に由来する。草間から赤羽へ、そして佐藤さんへと、その技術と工房の名称は受け継がれてきたのである。 孔版の世界には、創作派(若山八十氏)、そして複製派(草間京平)とよばれる二つの流れがある。創作派は、複製派を一段低い評価で接する向きがあるようだが、私は共に謄写技術が生み出した当然の二潮流ととらえている。高水準の手技に心奪われると同時に、伝統技術の継承を祈りたいような気持である。 なお「浮世絵郵趣会」は、入会者を広く求めている。会の目的を「謄写版で復刻した浮世絵作品を頒布することで、そのすばらしさを紹介すると同時に、黒船工房と共に謄写版の火を灯し続けたい」としている。 会では、今年7月から「竹久夢二謄写版画集」(葉書シリーズ)を新たにスタートさせた。入会、購入についての連絡方法、連絡先は下記のとおり。ハガキで問い合わせると、資料が送付される。 〒869-1602 熊本県阿蘇郡高森町大字高森615 浮世絵郵趣会 会長・熊谷文夫 |
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