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謄写版のインキ なにを、どう使うか? 戸祭 秀雄/孔版茨城学友会 謄写印刷用インキというのは、学校や官庁などで複数の刷り手が刷って、後始末が不十分なまま放置しても絹を痛めることが無いよう(それだけの理由ではありませんが)、インキが乾燥することはありません。これはメリットですが、そのために、何年たっても手ずれがしたり、油滲みがしたりするデメリットがありました。 中性インキと平版インキ その後、輪転謄写機が開発されてからは、中性インキと呼ばれる乳化剤による輪転機用のチューブ入りインキが使われるようになり、手ずれ、油滲みがなくなりました。同時に、チューブをセットするだけの操作になりましたので、インキに直接触れることもなくなりました。 現在、私たちはもっぱら多色で美術印刷をしますので、主としてインキは平版インキ(オフセット印刷などで使用するインキ)を混色し、灯油を加えて練って使っています。乾燥する時間はインキの種類(色)によっても異なりますが、それ自体乾燥します。空気に触れている部分は缶の中でも固まります。また、早く乾燥させたいときは乾燥促進剤を併用します。この性質から、手ずれや油滲みなどのない、水にも強い堅牢な作品になります。ところが、これも需要の関係でしょうが、以前は供給された小缶(250g)がなくなり印刷所用の1kgのみになってしまいました。 油絵具 1kg缶は個人(特に初心者は印刷量が少ない)で使うのには、やや大きすぎるので、サクラ版画絵具(油性)を併用したりします。これは色数が少なく混色によって欲しい色が必ず得られるとは限りません。また、平版インキでも、紫色や茶色はインキを混合して発色させるのは難しい色です。 簡単に入手できる色は油絵具です。これは色数も多彩ですし、紫系や茶系も好みの色を選ぶことができて便利です。ただし、油絵具は筆につけて描く用法から粘り気や流動性がありませんので、そのままでは、やや刷りにくさをともないます。しかし、これらを原色で使うことはほとんどなく、色種として使いますので、無色の平版インキともいえるビクトリア(メジューム)やマットニスに加えれば使いやすくなりますし、特にニスは乾燥が速いので、印刷直後のインキの落ち着きが良いようです。平版インキ、版画絵具、油絵具はいずれも油性ですから、混合しても灯油を溶剤として練ればよくなじみます。 お手入れ 清掃の方法は、ほとんど「ガリ版ネットワーク通信」通巻21号“謄写版のお手入れ法”のとおりです。しかし、油性インキは乾燥する性質があり、いったん乾燥すると溶かすことができませんので、印刷終了後の清掃は絹枠やローラーに付着したインキが無くなるまで、十分にしなければなりません。なお、余分に調整したインキは空気に触れないよう、ラップに包んで“おひねり”にし、セロハンテープで止めておけば、固まらずに保存することもできます。 (2004年4月発行『ガリ版ネットワーク通信』通巻22号から転載) |
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