『サステナビリティ』はdrupa2024のキーワードのひとつで、(おそらく)全ての出展企業が印刷会社のサステナビリティ向上を後押しする提案をしていました。主催者も、タッチポイント・サステナビリティ(touchpoint sustainability, tps)というエリアを企画・設置しました。
tpsでは、印刷機材・資材メーカー、紙パルプ製造機材メーカー、(インキなどに使用される材料を生産する)化学メーカーなど様々な企業の取り組みを紹介する資料や展示、担当者によるパネルディスカッションなどを通じて、来場者はサステナビリティについての理解を深めたり、それをさらに高めたりするヒントを得ることができました。
しかし、理解を深めたりヒントを得たりするだけでは、自社のサステナビリティを高めることはできません。tpsには、実際に行動を起こすためのチェックリストや、印刷会社に求められるサステナビリティ関連のISOなども表示されていました。
drupa会場には、印刷会社や顧客企業のサステナビリティ向上を支援する多くのWebサービスも紹介されていました。そのひとつに、二酸化炭素排出量を自動的に算出するWebサービスを提供するCarbonQuota社(英国)がありました。このサービスを使うことで、国際的な基準に沿って二酸化炭素排出量が算出でき、その算出結果の証明書も発行されます。そのため、特にグローバルな企業を顧客とする、またグローバルな企業の獲得を考えている印刷会社・顧客企業にとって、魅力的なサービスとなっています。
Tongadive社(英国)は、デジタル製品パスポート(Digital Product Passport, DPP)という、トレーサビリティを確保する様々な情報が記録されたデジタル証明用のプラットフォームをWeb経由で提供する会社です。同社のプラットフォームを活用することで、DPPを発行したり、追跡番号などを使って荷物や製品の状況を把握したりできます。同社ブースでは、欧州の医薬品メーカーなどがこのサービスを導入・活用している事例が紹介されていました。
drupa会場には、印刷されたQRコードからDPPを表示・取得できるパッケージも展示されていました。子供の健康と安全に配慮した粘土を生産・販売するドイツのメーカー Knetae社のパッケージで、これはパッケージに関する主催者企画エリア タッチポイント・パッケージング(touchpoint packaging, tpp)で紹介されていました。DPPを通じて、このパッケージの粘土の製造日や製造場所、素材などが証明されます。今後は、流通経路といった情報も追加されていくと思われます。
今年(2024年)7月22日、出版社のハースト婦人画報社は、広告やイベント活動から排出される温室効果ガス(GHG)を実質ゼロにできる「カーボンニュートラル広告プラン」を広告主に提供する計画を発表しました。その一歩として、同社は全定期刊行誌14誌の雑誌製造から排出されるカーボンフットプリントを算出しています。このような事業の中にサステナビリティを組み込む動きは、これからどんどん増えることが見込まれます。
サステナビリティはまだ新しいテーマのため、今から積極的に知見を蓄積すればこの分野での優位性を築くことができます。今後増えていくことが想定されるこの分野向けWebサービスなども活用しながら、自社のサステナビリティを高めつつ顧客企業のサステナビリティ向上に貢献することで、売上・利益を伸ばしましょう!
ブライター・レイター 山下 潤一郎 様
ブログへのリンク:Brighter Later Blog