前回のDNPに続いて、今回は凸版印刷の中期経営計画(2023年度〜2025年度)について、「新中期経営計画」(2023年5月16日発表)などの資料をもとに分析します
この資料によれば、凸版印刷は前中期経営計画(2020年度〜2022年度)を変革&深化の始動期「基盤構築フェーズ」、また新中期経営計画(2023年度〜2025年度)を変革&深化の加速期「成果獲得フェーズ」と位置付けています。そして、現在の中期経営計画期間中に「DX (Digital Transformation)」「SX (Sustainable Transformation)」「新事業(フロンティア)」などで成果を獲得する計画としています。
このDXには、例えば、金融機関や行政向けの「ハイブリッドBPO」、メーカーや流通など向けの「マーケティングDX」「製造・流通DX」、電子書籍、VR、メタバース、教育ICTといった「デジタルコンテンツ」などが含まれます。またSXでは、環境に優しいSX商材を開発し、日本市場だけでなく欧米やアジアなど海外市場にも提供する計画となっています。
新事業(フロンティア)には、自社メタバースプラットフォームの構築といった「メタバース事業」、ヘルスビッグデータ分析事業やオンラインメディカルサービスなどの「ヘルスケア事業」、自律型移動ロボットや産業機器など向けの「センサー事業」などが含まれます。
一方、出版印刷や商業印刷などの「コミュニケーションメディア」や紙器・ラベルなど「国内パッケージ」といったサービスは、DNPと同様に、左下セグメント(市場魅力度 小 x 効率性 小)に分類されています。これらは、効率性を高めることで安定収益事業への転換が進められる計画です。
コミュニケーションメディアでは「印刷拠点の統廃合の継続」「リソース(拠点、人財)のDX事業へのシフト」などを通じた効率性向上が進められる予定です。ただ、それでもこのサービスを含む情報系既存事業の営業利益(2025年度)は、2022年度と比較して103億円減と縮小することが見込まれています。
国内パッケージでは、「紙器事業の再構築実施による、全国製造拠点の再編に伴う固定費削減」や「低収益品の見直しによる改善」を通じた収益改善案が発表されました。その結果、国内パッケージなど生活系既存事業では(情報系既存事業とは対照的に)、2025年度の営業利益率は(2022年度と比較して)45億円増加する計画となっています。
ところで、凸版印刷は今年(2023年)10月に持ち株会社制の経営体制へと移行します。それに伴って「凸版」がローマ字表記(TOPPAN)になり、何より社名から「印刷」がなくなります。実際、現中期経営計画期間中の稼ぎ頭が「DX」「海外パッケージ市場」「新事業」など、これまで国内印刷会社がターゲットとしてきた市場の枠を超えたものが中心になっていますから、ある意味当然なのかもしれません。
DNP・凸版印刷の中期経営計画から、大手印刷会社の国内印刷市場戦略に大きな変化が起こっていることがわかりました。DNP・凸版印刷による既存事業再構築から出てくる様々な事業機会にもしっかりと目を配りつつ、ぜひこの機会に自社の「印刷の枠を超えたサービス」の現状確認そして可能性の検討なども行いましょう。そして、厳しい市場環境にマケズ、売上・利益を伸ばしましょう!
ブライター・レイター 山下 潤一郎 様
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