大日本印刷・凸版印刷の中期経営計画分析 . . .(1)大日本印刷

この5月、大日本印刷・凸版印刷はともに今年度(2023年度)から始まる中期経営計画(2023年度〜2025年度)を発表しました。今回は、大日本印刷(以下、DNP)の中期経営計画を「2022年度決算概要 及び 2023〜2025年度 中期経営計画説明資料」(2023年5月17日)などをもとに分析します。

 

DNPは今年度、事業セグメントの名称を変更(一部廃止)しました。(商業印刷・出版印刷・フォーム印刷などを含む)情報コミュニケーション部門は「スマートコミュニケーション部門」、(パッケージ印刷(紙器・軟包装)を含む)生活・産業部門は「ライフ&ヘルスケア部門」になりました。飲料事業はライフ&ヘルスケア部門に移行され、その結果、飲料部門は廃止されました。

 

また、「市場成長性・魅力度」と「事業収益性」の2軸で全ての製品・サービスを以下の4つに整理・分類しました:

 

* 成長牽引事業:市場成長性・魅力度「大」 x 事業収益性「大」

* 新規事業:市場成長性・魅力度「大」 x 事業収益性「小」

* 基盤事業:市場成長性・魅力度「小」 x 事業収益性「大」

* 再構築事業:市場成長性・魅力度「小」 x 事業収益性「小」

 

スマートコミュニケーション部門のうち、コンテンツ・XRコミュニケーション関連製品・サービスは新規事業、イメージングコミュニケーション関連(写真メディアなど)・情報セキュリティ関連(BPO, 認証・決済関連)は基盤事業に分類されています。

 

一方、商業印刷・出版印刷など既存印刷製品・サービスは再構築事業に分類されました。再構築事業は今後、「事業を見直して収益性を強化し、基盤事業へ移行」するか、「縮小撤退」するかが求められます。

 

 

 

 

ライフ&ヘルスケア部門では、モビリティ・産業用高機能材関連(バッテリーパウチなど)が成長牽引事業に分類されました。また、メディカル・ヘルスケア関連製品・サービスが新規事業です。しかし、紙器・軟包装など既存印刷関連製品・サービスや飲料事業などは、再構築事業と位置付けられています。

 

 

DNPが中期経営計画の中で、既存印刷関連製品・サービスを再構築事業に分類して見直し・縮小撤退を進めることを明確にしたのは、とても残念です。しかし、この取り組みが進むことで、中小印刷会社は過度な価格競争から脱却したり、事業を拡大したりすることも期待できそうです。

 

次回は凸版印刷の中期経営計画を分析します。お楽しみに!

 

 

 

ブライター・レイター 山下 潤一郎 様
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