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株式会社ショーワ
2000年6月9日作成 ショーワdrupa2000視察団は、2000年5月18日に渡欧し5月25日に帰国した。参加者は34名であった。以下は、参加者の見聞、現地で得たカタログその他資料、ニュースリリースなどをもとに、drupa2000を振り返り、さらに今後の技術動向を展望するものである。 drupa2000について drupaは、4年に1回デュッセルドルフ(ドイツ)で開催される世界最大の印刷産業見本市である(ただし前回は1995年)。今回は世界46カ国から1800社が出展し、展示面積の23万平方メートルとともに、史上最大の規模となった。予測では、2週間の会期中の来場者は50万人、日本からの訪問者も3000人に達する。 従来この展示会はDruck und Papier(印刷と紙)の頭文字を取ってDRUPAと大文字で表記されていたが、今回はコンセプトをprint media messe(印刷メディア展)と改め、ロゴも小文字のdrupaに変わった。コンセプト変更の背景には、今日の印刷産業がすでに「刷りと紙」ではくくれない多様なメディアの交錯する場となっていることがあり、今回の催しは「デジタル・ドルッパ」とも称された。 今回のdrupa2000は、工程間を垂直に結ぶ「デジタルワークフロー」と各種メディアを水平に統合する「クロスメディアパブリッシング」が2大テーマといわれた。ただし、このような抽象概念を背景とし、現実にもコンピュータネットワークの内部で重要な部分が処理されるジャンルは、時間と語学力の壁もあって視察団メンバーも十分把握しきれなかったようであるし、展示そのものもかならずしも成功だったとは言いがたい。とはいえ、印刷産業の将来を見る上で欠かせぬテーマであり、これについても後述する。 以下、今回の展示会で最も目立ったデジタル製版・印刷分野をはじめとして、分野別にまとめておく。上述のように、視察団参加者がそれぞれの関心に基づいて視察した結果を集めたものであり、かならずしもdurupa2000の全貌を明らかにするものではない。とくに、一般のオフセット機、製本、パッケージ、スクリーン印刷などは、メンバーの関心が薄く、これらについて報告できることは少ない。 オンプレスイメージング印刷機 今回の視察団で最も多くのメンバーが興味を持って見たのは、オンプレスイメージングの多色印刷機だったと思われる。前回のDRUPAは「CTPドルッパ」と呼ばれ、CTP(computer-to-plate、computer-to-press)が話題を独占した感があったが、今回はCTPがすでに実用段階に入っていることを確認させる催しとなった。 その中でも各メーカーが先端を競ったのがオンプレス機である。 まずリョービは、drupa初日の5月18日に、機上(オンプレス)でダイレクトイメージング(DI)を行うRYOBI 3404 DIを世界同時発表して話題を集めた(右写真)。独自のシリンダー配置を採用してコンパクトに仕上げたA3縦通し4色機である。イメージング部にプレステック社のDIヘッドを2ユニット装備し、1つのイメージングヘッドで2色分をイメージングする。4色機ではあるが、高額なイメージングヘッドを2ユニットのみ使用することで製造コストを下げている。 そのほか日本からは、アキヤマ印刷機製造、桜井グラフィックス、小森コーポレーション、篠原商事などが、プレステックまたはクレオサイテックスのDIヘッドを搭載した機種を発表した。大日本スクリーンは、独自ユニットを搭載したTruePress744などTruePressシリーズを発表した。744は桜井グラフィックスとの共同開発で、三菱製紙のCTPプレートによる専用機。 海外メーカーでは、GTO-DIでダイレクトイメージング分野を開拓したハイデルが、改良版のQuickmaster DI 46、Speedmaster 74などを発表した。アダスト(Adast)はゼロックスとの共同開発によるPAX DIを発表した。PAX DIはゼロックスのDigiPathワークフローシステムに対応、DIユニットはプレステックを採用している。そのほかカラットの74 Karat Digital Pressなどが話題を集めた。 以上は、一般の印刷機と同様、印刷が終わるとプレートを捨てるシステムであるが、次世代技術としてはプレートレスともいえる繰り返し使用可能なプレートシステムが控えている。マン・ローランドのDicoweb Digital Offsetは、リボン上にイメージングし、そのイメージをシリンダーに転写して印刷する。印刷がすむと前のイメージは消去され、リボンから新しいイメージが転写される。アグファがクレオサイテックスの技術と組み合わせて紹介したLiteSpeedプレートレス技術は、プレートを洗浄せずに次のイメージングが行えるシステムである。このほか、小森、篠原、マン・ローランド、ハイデルなどが同様の技術で名乗りをあげている。 GTO-DIの登場から最近まで、ダイレクトイメージングシステムはコストの高さや刷り上がり品質の物足りなさから、日本では普及が進まなかったが、今回のdrupaを機に一気に実用段階に突入しそうな気配である。多数メーカーの参入による相乗効果で、さらに品質やコストの問題が改善されれば、ダイレクトイメージング機(をはじめとするデジタルプリンター)が、広い分野で従来のオフ機に取って代わる可能性が十分ある。 トナー/インクジェット式多色機 トナーベースのデジタル印刷機はインディゴ(Indigo)とザイコン(Xeikon)によって開発され、今も両社はこの分野を代表する。 単独でホールを借り切ったハイデルとゼロックスを除くと、インディゴのブースは会場で最もにぎわった場所のひとつであった。劇場を思わせる300席のエリアでビートをきかせた音響を背景にプレゼンを展開し、会期中に2万人の来場者を見込んでいるとのことであった。 同社はE-Printの各機種を出品したが、うちPublisher 4000、同8000は、インディゴ初の輪転機である。4000は2エンジンで2000枚/A3片面/4色/時、8000は4エンジンで8000枚/時。これまでの枚葉4色機やDI機の市場に対応できる速度を備えた機種といえる。品質もかなりのレベルに達しているように感じられた。 ザイコンは巻き取りのDCPシリーズと初の枚葉機CSP320をずらりと並べて、可変印刷のデモを展開した。DCP320DとDCP500Dは、同社が第3世代機と位置づけているもので、新開発のトナーを採用している。CSP320Dは、最大A3サイズ、両面4色の印刷ができる。印刷速度は960枚/時。解像度は600×600dpiだが、2400dpi相当の印刷品質が可能という。 ゼロックスはDocuColor 2000シリーズの2機種を出品した。デジタルブランケットと呼ぶ新方式によってオフ機並みの印刷品質を実現し、独自の紙搬送方式を採用し紙厚も幅広いものが扱える。 ハイデルとコダックの共同出資会社ネクスプレスは、網点を変化させる技術を組み込んだNexPress2100を発表。ハイデルとしては初のデジタルカラープリンターである。ハイデルはモノクロのデジタルプリンターも発表(下記Digimaster9110)したが、この例のように各メーカーが本来の得意分野を超えて、他メーカーの得意ジャンルを相互侵犯しはじめたのが、今回のdrupaで目立った大きな動きである。オフ機メーカーがデジタルプリンターの領域に手を伸ばした例は、上の「オンプレスイメージング印刷機」の項でも見た。 インクジェット方式は、高速化、高品質化が着実に進んでいる。かつてはプロ用のシステムと見なされていなかったインクジェットが、今ではカラープルーフに利用されているし、速度も実用的なものになりつつある。また大型化も急速で、会場で笑いさえ誘っていたNUR Blueboard HiQ+という機種は、じつに5mのワイド幅で出力する大型プリンターである。 モノクロページ物デジタル印刷機 ゼロックス社のDocuTechが切り開いた高速モノクロプリンターの分野に、今回は強力なメーカーがいくつか参入した。 ハイデルベルグ社は、コダックとの共同開発による600dpi、A3、110枚/A4/分のレーザープリンターDigimaster9110を発表した(写真)。バリアブル(可変)印刷に対応し、会場ではパーソナル印刷したモノクロページをカラーページに統合するデモが行われたという。 カラープリンターE-printを持つIndigo社は、カラーモデルへのアップグレードが可能な136ページ/A4/分モノクロレーザーEbony(エボニー)を発表した。 ザイコン/マン・ローランドは、巻き取り、マグネトグラフィー方式、480dpi、1600ページ/A4/分の高速機Nipson 7000を発表した。 国内メーカーでは大日本スクリーン製造が、かねてから各展示会で参考出品してきたTruePress NP-V200を実演した。600dpi、200ページ/A3片面/分、100ページ/A3両面/分と、スペック上はDocuTechを上回る高速である。価格、使用条件などが未定だが、この分野でのプライスリーダーとなる可能性があり、社内印刷市場が飽和状態となって印刷業界にターゲットを合わせてきたDocuTechとのシェア争いが注目される。 ゼロックスは、DocuTech 2000シリーズの6180、6155、6131、6100の4モデルを出品した。6180は180枚/A4/分、6155は155枚/A4/分、6135は135枚/A4/分、6100は100枚/A4/分。DocuTechと並んですでにオンデマンド出版でも利用されているIBM Infoprintは、モデル2000、4000が出品された。 CTPの動向 「CTPドルッパ」から5年、CTPは完全に印刷の標準技術の一つとなった。版材、レコーダーとも多数が出品され、いちいちは紹介できないが、主要な傾向をあげておくと、ひとつは、可視光CTPからサーマルCTPへの流れで、これはすでに大勢となった。 これを超える新しいトレンドとして、バイオレットCTPとUV対応CTPがある。バイオレットCTPは、イメージング機構が単純でシステムが低廉なこと、高速なイメージングが可能、通常光のもとでプレートが扱えるなどのメリットがある。UV対応CTPでは、安価なPS版が使えるので、コスト削減の期待がかかる。 プリントシティ 今回展示会の目玉の一つが、第6ホール全館を使ったテーマ展示「プリントシティ」である。アグファとマン・ローランドの呼び掛けに60社あまりが応じて、マルチベンダー環境でのワークフローを「実演」した。しかし、はじめに触れたように「ワークフローの実演」は必ずしも成功しなかったように思われる。背後でワークフロー管理システムが動いていても、実際にワークフローとして目に見えるのは通常の印刷物製造工程であって、ワークフロー管理手法のありがたみを実感することはできない。この辺が、ハードウェアを見せることを軸に成り立ってきたdrupaの今後の課題であろう。これはまた印刷界共通の問題でもあって、デジタルワークフローはこれからが本番である。今回のdrupaでは、第6ホールのほか各所でワークフロー製品が見られたが、とりあえず問題が提起された段階と見たい。 このプリントシティでは、PDF〜CIP3によるデータ管理を軸として、カタログ、ハガキ、雑誌、新聞、紙器など8つの工程が再現された。たとえば雑誌印刷では、アグファのApogee(PDF)からCTPに出力し、ローランドの印刷管理システムを経由してCIP3データをオフ輪に送り、さらに綴じ機、仕上げ断裁機へといった工程である。 国内メーカーでは篠原商事が唯一プリントシティに参加し、通常のオフ機のほかオンプレスCTPのSHINOHARA 74IV Pの実演を行った。 エピソードをひとつ。プリントシティでは「Web」という表示が目立った。「ウェブ」といわれれば若い世代はインターネットを思い浮かべるが、ここで使われていた「ウェブ」は巻き取り紙の意味であった。この表示に惑わされて、稼働中の大型印刷機とインターネットとのかかわりを考えあぐねたメンバーも少なからずいたようである。 PDFを巡って PDF周辺では多くの提案があった。 まず単体では、アドビのIllustartor ver9.0がデフォルトのデータ保存形式としてPDFを採用したことが特筆される。縦組みなど多言語対応のDTPソフトとして注目される同社のInDesignもPDFネイティブである。こうしたアドビの動きは、プリプレスメーカーにおけるPDFの採用とあいまって、PDFの役割をさらに大きくするにちがいない。 PDFを軸とするワークフローについては、見方が分かれた。会場では、プリプレスデータの標準フォーマットはPDFで決まりとの声も聞かれたが、視察メンバーの中には異論もあった。 PDF対応ワークフローは、従来のPostScriptワークフローに代わるものとして期待されている。PSベースのデータ交換は、必要フォントが出力側にない、必要な画像が添付されていない、最後のページでエラーが起きるなどの問題がつねに発生し、これがオープンなシステムの活用を妨げていた。たとえばDocuTechのような強力なプリンターがあっても、これをオンデマンド出力サービスに利用することが難しく、自社で作成した完全なファイルしかプリンターにかけられないのが実情で、中にはたんに高速コピー機として使われているケースもある。これに対しPDFでは、ページ単位でRIPに出力でき、フォントを含めてすべてのページ要素をファイルに埋め込める。こうしたことが、ワークフローシステムにおけるPDF採用の大きな要因である。 ただし、日本では使用できるフォントが限られ、この課題は未解決である。また、PDFは文書管理手段としては不都合が多く、検索やデータ抽出機能を盛り込んだシステムを構成しようとすると、非常に高くつくことがある。組版データ(ディスプレイ用データ)としても文書管理手段としても不十分ならば、現時点ではこれまでどおりのPSベースで十分という判断は現実的である。 各種ワークフロー管理システム クレオサイテックスとハイデルベルグは、Prinergy 2.0を発表した。ワークフローシステムをモジュール化し、目的に合わせて必要なモジュールを組み合わせられる。クレオサイテックスは紙器パッケージ向けのPrinergyPowerpackも発表した。 アグファは、ピュアPDFをデジタルマスターとし、TIFFを併用するApogeeシリーズ2を発表し、大日本スクリーン製造は、TrueFlowの新バージョンを発表した。富士写真フイルムは、今秋に向けて開発中のCelebra NT Extremeを発表した。 以上、いずれもPDFをベースとしたシステムである。 PDF以外またはPDFの枠組みを越えるワークフローとしては、フラウンホーファIGDがCIP3の標準フォーマットPPFを検証・エディットするソフトのデモを行い、またインターネット経由で印刷受発注を行うweb2pressを発表した。RIPメーカーのハーレクインは、リモート校正を含む多機能ワークフローMAXWorkFlowを発表し、東洋インキは、ハーレクインRIPが出力するTIFFデータを大貼りするPageFrontを開発した。ゼロックスは、DocuTechのフロントにあたるワークフローシステムDigiPathを発表した(「オンプレスイメージング機」の項を参照)。 アドビ、アグファ、ハイデル、ローランドの4社は、PDF/XMLベースでWebに対応するジョブチケットフォーマットJDF(Job Definition Format)を共同提案した。4社が1年以上かけて仕様を検討してきたもので、これまで対立関係にあったアドビ社のPJTFとCIP3が推進するPPFの両方をサポートし、印刷工程だけでなく受発注にかかわるフローも取り込んだところに特色がある。 JDFは今回drupaでの公式発表がアナウンスされていたが、会場の外れの小さなブースに簡単なパンフレットを置いただけの展示で、大きな関心を集めているようには見えなかった。大型機材展には不向きなテーマなのかもしれない。詳細は未確認だが、実ジョブ(印刷される正味データ)をPDFで管理し、データの受け渡しや進行管理の枠組をXMLで記述するシステムと思われる。 DTPの動き 技術革新の話題の中心からは外れたジャンルであるが、アドビのInDesignのほか、クォーク社からいくつかの提案があった。 ひとつは、QuarkXPressドキュメントから構造化されたデータを抽出してXML形式で展開・保存するツールavenue.quarkである。avenue.quarkは目下開発中であるが、日本語化も並行して進められている。 QuarkWraptureは、パッケージデザインのための3Dによる視覚化ツールである。CADファイルの取り込み、立体デザインの画面確認、折り畳みのアニメーション表示などの機能を備えている。 QPS(Quark Publishing System)2.0は、編集、レイアウト、進行管理などを効率化するグループウェアである。ライターからプリプレススタッフまでの関係者が、単一のQuarkXPressファイルで作業できる。 そのほかクォーク社では、クォーク製品の全ラインアップに適用できるクライアント/サーバー・データベース技術や、カスタムカタログなどを作成するためのクライアント/サーバーシステムなどを開発中である。 アドビは、すでに触れたように、InDesignとIlustratorでPDFを標準のフォーマットとして採用し、またジョブチケットフォーマットJDFの規格策定に参加するなどの動きがあったが、PDFそのものの将来に関するアナウンスはなかった。 一般向けデスクトップOSとして、はじめてJava2を統合サポートするアップルコンピュータの次世代基本ソフトMac OS Xの発表は見送られた。6月下旬の東京グラフィックスフェアで、アップルによるセミナーが予定されている。 製本、紙加工、梱包 参加メンバーの関心が比較的薄かった分野であり、具体的な報告ができないが、製本から配送までのポストプレスは、かなり充実した展示が行われたという。 理由は2つ考えられる。ひとつは、1990年にDRUPAから切り離された「紙加工」と「梱包製品」が復活したこと。10年ぶりの出品で、メーカーの意欲もさかんだったのであろう。もうひとつは、コンピュータ化の進展。三次元処理の必要な製本・紙器分野には、CADや3Dで蓄積されたコンピュータテクノロジーが近年急速に流れ込んでいる。未開拓のビジネスチャンスが埋もれている分野であり、デジタルプレスやオンデマンドという形で印刷技術がひとつのピークに差し掛かった今、印刷界の次のテーマとしてポストプレスの動きが注目される。 インターネットサービス インターネット関連サービスの企業がdrupaに出展したのは今回がはじめてであろう。また印刷関連メーカーも、各種のサービスを発表した。 最も広く見られるサービスはいわゆるEコマースの仲介事業で、受注側からマージンを取る仕組みで印刷の受発注業務を仲介している。日本では、この種のサービスはまだほとんど動き出していないが、準備は各方面で進められている。 組版済みデータ、画像データなどの大容量送受信などもサポートするグラフィックVANもいくつか紹介されていた。ヴィオ(Vio)は、リモート校正/印刷など各種のASPを盛り込んだシステムである。ワムネット(WAM!NET)は、非インターネット接続で安全性が高いが、インターネット接続サービスも併用している。 サイテックスはprintCafe PCXとInSiteを発表した。printCafe PCXは、プリントカフェ社のビジネスワークフローとサイテックスのPrinergy印刷制作ワークフローを統合したXMLベースのシステムで、グラフィックアーツに特化した企業間通信をサポートする。InSiteは、印刷会社と顧客がインターネットを介してデータ転送やジョブの確認を行うためのインターフェイスである。 富士写真フイルムはマイフジフィルム・ドットコム(myfujifilm.com)の構想を発表した。情報サービスのe-Imformation、消耗品のネット販売や不要装置のオークションを行うe-Commerce、進行管理や遠隔校正などの機能、データの保管・交換のためのスペースの提供、アプリケーションの時間貸しなどを行うe-Productionなどからなる総合サービスである。北米から開始して、順次世界にサービスを広げるという。 OS for Print 今回のdrupa2000が「デジタルドルッパ」と呼ばれたことに、多くの来場者は異論ないものと思う。そのなかでも、CTPからデジタルプリンターまでの印刷技術が、展示の焦点となったことも大方の一致する感想であろう。このように見るべきものがあり、会場もにぎわい、各ブースも活気のある展示を展開し、全体としては4年に一度の大イベントにふさわしい内容であったと思われる。 不満が残るとすれば、当初かかげられた「デジタルワークフロー」と「クロスメディアパブリッシング」の2大テーマが、十分明瞭な形では語られなかったことであろう。 先に「ワークフローの実演」ということを言ったが、ワークフローを見える形で提出したという意味では、ゼロックスブースの展示が成功していた。同社の代表的プリンターに、給紙装置、排紙装置、搬送装置、製本装置などを組み合わせて長いラインを構成したものだが、見ごたえもあり、見ていて楽しくもあり、来場者の目を引きつけた。 ゼロックスブースの成功は個別の一例であるが、技術、機器、データ形式、媒体、これらのつなぎ目をどうするかが、印刷界に共通するこれからの課題である。技術と技術をどうつなぐか。たとえばDTPとプリンターの技術をどうつなぐか。機器をどうつなぐか。デジタルの時代といわれるが、たとえば搬送装置や製本装置は地味ではあっても今後も印刷のキーテクノロジーであろう。異なるデータ形式、たとえば既存のデータベースシステムに蓄えられたデータと組版データをどうつなぎ合わせるか。受発注フローと製造のフローをどうつなぐか。紙媒体とインターネットをどうつなぐか。こうした問題に解決を与えるのが、「デジタルワークフロー」であり、「クロスメディアパブリッシング」であろう。 こうしたインフラに属するテーマを扱うには、drupaという場は華やかすぎたかもしれないし、技術の細部を見せる場としては器が大きすぎたかもしれない。 今年2月にクレオ他の共同出資で設立され、印刷業界を対象に広範なインターネットサービスを開始したプリントカフェ社は、「Operating System for Print」をコンセプトとして掲げた。このコンセプトは、今後の印刷界が取り組む課題を示唆していないだろうか。CTPにしろDI印刷機にしろすでに前回のdrupaで提起されており、今回はその成熟を確認した催しであったが、次回2004年のdrupaでは、「OS for Print」のある程度成熟した姿を見ることができるのではないか。 変更履歴 2000-05-29 暫定版作成。 2000-06-09 「製本、紙加工、梱包」の項を追加。「DTPの動き」の項を加筆。その他、一部修正。 |
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