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工程の不備は印刷部門へしわ寄せ
SHOWA NEWS No.88
1999年7月1日号より CTP(コンピュータtoプレート)に関する日本印刷技術協会と日本印刷産業連合会の調査報告書が、あいついでまとまった。日本印刷技術協会(以下、協会と略)の調査は、会員を対象とするアンケートからCTP導入の現状を分析したもの、日本印刷産業連合会(以下、産連と略)の調査は、品質管理・工程管理の観点から導入の留意点を明らかにしようとしたもので、両者をあわせるとCTP導入のポイントが見えてくる。 普及率はまだ数パーセント 協会調査によれば、回答企業の2割がCTPを導入済みであるが、回答企業数は少数であり、これを業界全体の水準と見ることはできない。以下、協会調査に数字に関してはいずれも絶対水準ではなく、傾向として見るべきものである。ちなみに産連の1年前の調査では、CTP導入済みの割合が4.4%となっているが、これも実状をかなり上回った数字であったと思われる。現状をリアルタイムで把握した資料はなさそうだが、関係者が感覚的に言及している範囲では、現在の普及率が数パーセント、2〜3年以内の普及率20〜30%といったところである。なお、今回の協会調査によれば、3年以内のCTP導入率は6割となる。 CTP導入の問題点 CTP未導入企業で導入コストが問題になるのは当然として、協会調査によれば、サーマルかフォトポリマーかといった方式の問題より、PS版との混在適性に関する不安のほうが大きかった。 社内でのCTP導入への抵抗は、製版部門が大きく、ついで印刷部門、営業部門の順。 これも回答数が少ないので、結論を急ぐことはできないが、印刷部門での抵抗は導入済み企業でのみ発生している。導入してみて、初めて印刷に関する問題点が実感できるということがあるかもしれない。 工程に不備があれば、そのしわ寄せは先送りされて、印刷工程に集中する。導入済み企業でのみ不満が発生しているという調査結果は、そのことを物語っている可能性がある。 工程のしわ寄せ 一般に、CTPプレートとPS版の相違にさほど神経質になる必要はないとされているが、CTPは網点の再現性が良いため、リニアカーブでセッターから出力すると、PS版と異なる仕上がりとなる。 「プレートセッタの出力カーブを従来のPS版にあわせるか,CTPの性能を活かすためにリニアに設定するのかはCTPを運用するうえで非常に重要な選択となる。2本の出力カーブを仕事により使い分けているケースもあるようだが,管理や連絡をきちんとしておかないと印刷部門にしわ寄せがいきかねない。」(協会報告書) こうしたしわ寄せを、導入前の時点で十分検討しておく必要がある。 従来の平台校正に比べると、現状のデジタルプルーフはまだ安定性で及ばない点に留意したい。その一方で、今後、デジタルプルーフへの転換が必然であるのも確かで、CTPの枠を越えた、印刷一般にかかわる課題でもある。 CTP出力拡大への課題 仕事をCTPに切り替えて行くための課題として、協会調査であげられた回答は、多い順に、デジタル校正、検版方法の確立、プレートとプルーフのOne RIP、差し替え訂正、面付け、CTP版での本機校正、遠隔地への設置、網フィルム入稿。1位のデジタル校正と2位の検版方法の確立が、他を圧しているが、これは他の項目に通じるもので、校正と検版に課題は集約される。 色校正に関して、産連の報告書は、プリプレスの各ステップでそれぞれのパーツの校正を済ませておくことを提言しているが、これは現実的ではない。各ステップで校了データを作ってから先へ進めというのは理想論であって、そのための人的・時間的コストによって、CTP化のメリットは消えてしまう。 色校正の現実的な対応策として、最も有効なのは受注側と発注側のコミュニケーション、つまり営業努力である。誰をも満足させる完璧なカラーマッチングシステムはありえない以上、これはどんなに技術が発達しても変わらぬ基本である。 その上で、望ましい運用手段をあげるならば、校正データと最終刷版を同じ1台のRIPから出力するOne RIPの考え方であろう。もう一つの理想は本機校正であるが、これにはCTP刷版の低廉化を待たなければならない。逆の理想形としては、色校正をしないという選択がある。カラープリンターからの出力を用いておおまかな体裁の校正だけですますという方法が、営業努力次第で可能であろう。 未導入企業におけるデジタル化 協会調査にもどると、CTP導入の前提であるデジタル化は、CTPを未導入の企業でも高いレベルに達している。 調査は、「単ページ制作」、「面付け」、「下版直前の直し」、「流用ページのデジタル入稿」、この4項目について行われ、導入済み企業では、「単ページ」、「面付け」、「直し」について100%デジタル処理というところが6割を超えた。 未導入企業でも、デジタル化は着実に進み、導入済み企業の水準にほぼ匹敵している。とくに、流用ページのデジタル入稿については、導入済み企業をしのいでいる。統計上有意な数値かどうか難しいところだが、興味深い。 利用率と導入効果 これも協会調査による。CTP導入済みの企業における社内利用率は、平均665.8版/月であるが、最少40版から最高2000版までバラツキが大きい。全刷版におけるCTPの割合は2割以下が半数を占め、全社的にCTP導入の効果を享受するところまでは至っていない。 CTPによる印刷の生産性向上は、「変化無し」と「10%アップ」が同数。納期短縮効果は、「効果あり」が「同じ」を上回った。いずれもマイナス効果をあげた企業はない。ただし、人件費の削減、CTP導入満足度などの項目については、否定的回答もあった。 アメリカの場合 アメリカ印刷工業会の調査によると、95年に5.9%であったCTP保有率が、97年には10%を超えた。また、印刷機上でCTP処理を行うCTPオン・プレスも1.2%から2.6%に上昇している。日米の比較をもとにした日本の将来予測がCTPについてもあてはまるとすれば、今後2〜3年で日本でもCTPがかなりの成長率を示すことになろう。 色校正にかんする指摘を昨年の産連調査から引いておく。 「色校正については、米国には平台校正がないという点が日本と大きく異なっており、ケミカルプルーフもしくはDDCPが一般的である。その代わり、色の最終確認は印刷刷り出し立ち会いによって行われているケースが多くみられる。DDCPによる校正方法がクライアントに広く受け入れられているという点では、CTPのワークフローを構築する上で非常に有利となる」 結局、色校正の基本は、最終出力にどれだけ近いシステムを用いるかにかかっている。それが日本では平台校正であり、アメリカでは刷り出し時の確認ということになるのだろう。 発注者がカラー印刷の実状に通じていれば、美術的な精度を問題にするほどでない通常の印刷物については、どのような手段を用いても色校正は可能である。また、発注者がカラー印刷に不慣れであれば、どんな手段を用いても最終的な確認の取り付けには困難がともなう。いずれにしろ、色校正の問題は営業努力の問題に行き着くほかはない。 |
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