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竹編集工房
竹本 守攻 ●注目のリョービ４色機 35回目を迎えたグラフィックスフェアは，今年も東京ビッグサイトで７月２〜４日までの３日間開かれた。最近の厳しい経済環境を反映して展示小間も出展社数も減ったが，その分，業界コーナーや講演会などでは人が集まっていて，全般的には静かで，無難なフェアであった。 フェアはここ４〜５年の熱く燃えるような話題の機器やシステムが見当たらず、いままで異常ともおもえたプリプレス人気も落ち着き，ここにきて組版の電子化が一挙に定着した。組版システムの人気は専用機とパソコンで２分しているが，話題を集めているブースがとくになく，加えて客足が落ち込んでいるのも気になる現象だ。ことしはその傾向が顕著に表れているおもいがした。 印刷マーケットの王道にカラー印刷の需要開拓がある。業界の主要印刷サイズであるA３対応のカラー印刷機が注目である。なかでも，リョービのA３対応縦通しの４色機，3304H機。３年ほど前に発売されて以来，省スペース型の４色機として人気を集めている。この間，縦通しのため見当ずれの心配があったが，給紙やくわえ部分に改良を加えた注目機だ。カラーの需要は今後増えることはあっても減ることはないとみられる。ただ，媒体が多様化していくことになるので，単純な量の拡大は望めないだろう。マルチな発想が重要になってくる。このカラー印刷機は，ショーワブースでも展示して，シルバープレートセッターとの組み合わせでのカラー印刷が来場者の視線を集めた。 さてもうひとつは，CTF（Computer To Film）とCTP（Computer To Plate）に対応したハイデルのハイブリット印刷機。スピードマスターSM52といって，従来工程のPS版からの印刷と，オンデマンド印刷が兼用で，品質重視と即納重視のカラー印刷ができる。この兼用印刷機の場合，工程管理と維持管理が生産性向上のポイントになるとおもわれる。来年のドルッパからの登場だ。両機とも５色機，６色機などのバリエーションがある。 ことしのフェアの特色は大きく取り上げるべきものが希薄だったが，そのなかで，印刷マーケットの開拓を掲げた自費出版が注目すべき事柄だろう。個人需要の掘り起こしに大きく貢献する自費出版は，息の長い需要を喚起するものだったが，ことしからその期待が大きく膨らんできた。業界コーナーにたくさんの自費出版物が展示されていたのは新鮮だった。昨年から日本自費出版文化賞が設けられ、朝日新聞社や丸善、小学館などが後援して行い，1700点以上の応募作品のなかから、大賞や部門賞がきめられた。これを主管するのが自費出版ネットワークで、印刷需要の掘り起こしに一役買っている。また、自費出版のホームページも開設されて、登録費用を支払えば誰でもインターネットで自分の本が紹介される。高齢社会のシルバーマーケットに期待が持たれる。 ●あぁっ・・・まもなく21世紀 21世紀の印刷マーケットは，多様なデジタル情報の交通整理と取捨選択，そして的確な決断力をもつ印刷会社が求められるだろう。21世紀の印刷は技術もマーケットもデジタル情報のなかで生きていかなければならないことは明々白々だ。大量に情報を伝達する手段としただけの印刷は，もはや過去のものになるだろう。コンピュータの特性を理解し，最大限活用する企業が21世紀を生き抜く。なかでも，通信回線や衛星などを媒体とするものはいちばんの勉強のしどころだ。そのほか大容量のディスクの活用，現在ではCD-ROMがあるが，DVDなどもその視野に入れておかなければならないかもしれない。このようにデジタル情報を包含した思考が求められている。 その裏づけとしては，いまの子どもたちの教育にパソコンが欠かせない道具になっていることがある。すでに中学校，高校にパソコンが100％導入されている。小学校ではまだ16％の普及率だが，これはもっと増えるだろう。ただし，にもかかわらず，本格的な活用ができていないというのが，いまのお寒い現状だ。先生の知識不足，学校側の教育体勢，ソフトの不確実さなど，いろいろな原因はあるが，これらは時間が解決していくことなので，まだまだといっている場合ではない。進む方向はデジタル社会だ。 話がそれるが，英国でも小学校でのパソコン普及はまだ17％という。米国は80％以上という。しかし，英国は学校教育のなかにパソコンを積極的に導入し，インターネットをやらせることが最大の目的で，世界各国の学校や友達とリアルタイムに話したり，情報交換を行っている。なかでも，外国語教育の実効に大きく貢献すると期待している。インターネットのバリアフリーを最大に利用した教育を目指している。こうした現状から21世紀の印刷業を考えなくてはならないとは，ツライ時代になった。 |
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