原稿テキストに簡単な印付け(マークアップ)をするだけで印刷用データを生成する手法が、いわゆるDTPの登場以前から行われてきました。複雑な組版には向かない手法ですが、理工系の出版社などでは高機能なDTPの登場後もこの手法を用いているところが少なくなく、処理ソフトは今も進化を続けています。またこの手法は、比較的シンプルなデザインのHTMLやEPUBの自動生成にも向いています。そのような用途のソフトを2つ、ReVIEWとPandoc、を紹介します。今回はReVIEWです。

ReVIEWとは

ReVIEW(レビュー)は簡単なルールで印付けしたテキストを、HTML、XML、LaTeX、PDF、EPUBなどに変換できるワンソースマルチユースのツールセットです。Linux/Unix互換システムで動作し、Mac OS XやWindows Cygwinでも動作可能です。

主な情報源は公式サイトのマニュアルですが、多少説明不足の感もあり、ユーザーによるネット上のメモが参考になります。

インストールや使い方については上記サイトをご覧いただくとして、以下ではReVIEWで作成した実例を見ていただきます。サンプルのコンテンツは、弊社PR誌『SHOWA NEWS』No.127の記事「データのビジュアル化を最小の労力で ―― グラフ描画ツール5選」を増補したものです。

HTML出力

素朴なCSSを適用したHTML出力です。
HTML版の全文は下記でご覧いただけます。すでに『SHOWA NEWS』をお読みになったかたにも参考になるかと思います。
- データのビジュアル化を最少の労力で

XML出力

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<doc xmlns:aid="http://ns.adobe.com/AdobeInDesign/4.0/"><title aid:pstyle="h1">1. Graphviz</title><?dtp level="1" section="1. Graphviz"?>
<p>Graphviz は、人や物のネットワーク、フローチャート、系統樹などに適したグラフ描画ツールです。Windows、Mac、Linux など多くの OS で利用できます。
まずシンプルな例から見てみましょう。…

これは上のHTML版と同じソースをReVIEWで処理して得られたXMLファイルの冒頭部分です。2行目の名前空間(xmlns)の宣言に注目してください。http://...AdobeInDesign/4.0とあるのはアドビの定めた仕様の名称で、このXML文書がInDesignでの取り込みを想定して作られていることがわかります。

ReVIEWの出力したXMLをInDesignに取り込んで印刷物を作る手法は、オライリー・ジャパン、インプレスジャパン、ソフトバンククリエイティブ、日経BP、翔泳社、技術評論社などで行われています(書籍制作フローを変える。「ReVIEW」という解。)。とくにオライリーでは制作フローの要所に位置づけられているようです。

PDF出力

HTML版とほぼ同じスタイルシートを適用したものですが、いちおう印刷物らしい体裁にあがっています。いうまでもなく、CSSを差し替えればいくらでも見た目を変えることができます。
PDF版はこちらでご覧(またはダウンロード)いただけます。表紙や目次の不備は試作ということでご容赦ください。
- graphtools.pdf

EPUB出力

電子書籍管理ツールのCalibreで開いたEPUB版のスクリーンショットです。
これもHTML版とほとんど同じスタイルシートを適用しています。
EPUB版はこちらからダウンロード(または表示)できます。
- graphtools.epub

ReVIEWの評価

ReVIEWを使い込んだ上での評価ではないので、印象批評的なものになりますが、HTMLやXMLの生成が容易で、EPUB作成ツールとしても簡便ですが、PDFについては環境の構築に手間取ったり運用上もまぎれが出てくる恐れがあります。印刷用データ(PDF)の作成については、上のXML出力の項で見たように、XML→InDesignというフローのほうが堅実でしょう。

途中からInDesignを使うくらいなら、はじめからInDesignでというのは一つの現実的な解です。しかし、ワンソースマルチユースを意図するなら、InDesignなどの組版ソフトだけで処理する場合でも、できるだけ早い段階で(作り込みすぎない段階で)いったんデータを固定し、それをマスターデータとして以後のフローを振り分けるべきでしょう。

実際に使うかどうかは別として、ReVIEWのような簡易フォーマッターについて検討することは、ワンソースマルチユースに取り組むさいの視点を与えてくれます。次回は、さらに多種のフォーマットに対応し、利用上のまぎれも少なそうなPandocを紹介します。

[2013-12-03]

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