竹内三二郎さんのこと
「弓之助回想録」(1988年11月発行『ショーワ60年史』所収)より

編集に当たった竹内さんは、草間さんや千田さんと同じ文学青年仲間で、その関係で昭和堂に出入りするようになったわけです。小説も書いていたようで、竹内さん原作の時代劇が京都の映画会社で映画化されたと聞いています。竹内さんは左翼運動をやっていました。当時でいう社会主義者です。アカ、アカといって蛇蝎のように言われたものですが、竹内さんはその地下活動をしていたのです。

うちでは常雇いではなく、一回発行するごとにいくらという形で仕事をしていました。たしか支那事変の前のことですが、ふいに姿を見せなくなり、どうしたかと思っていたら、市ケ谷の刑務所に入っていました。なんでも、神保町のどこかでレポをやっていて捕まったということです。それで仕事先の私の所へ警察から呼び出しがあり、やがて私が身元引請人になって刑務所から出てきました。どちらかというとわがままな男で、収監中は退屈なものだから、あの本を持ってこい、この本を持ってこいと言われ、本屋で買って届けたこともあります。

要注意人物だというので、特高(特別高等警察)が時々見回りに来て、「竹内君やってますか」なぞと聞いていったものですが、大東亜戦争が勃発すると身柄を拘束されて九州へ送られました。(……)再び竹内さんが上京してきたのは戦後の二十三年のことです。
「昭和堂月報」の時代
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